トロッコ

Introduction イントロダクション
お父さんが死んだその夏、 少年とその家族は、お父さんの故郷・台湾に初めてやってきた。 そこには日本語を話すおじいちゃんが待っていた。
ある夏の日、敦は急死した台湾人の父親の遺灰を届けるために、弟と日本人の母親と、台湾の小さな村にやって来た。素直に甘えられる弟とは対照的に、敦は悲しみも母親を案ずる気持ちも、小さな胸の中にしまい込んでいる。そんな心情をくみとる余裕がない若い母親とは、どこかギクシャクした毎日を東京では過ごしていた。“近くて遠かった”父親の故郷では、日本語を話す優しいおじいちゃんが待っていた。敦が父親から譲りうけた大事な写真に写るトロッコの場所も一緒に探してくれる。―――数日後、ある決意を胸にトロッコに乗り込む敦。最初はそのスピードに胸を躍らせるが、鬱蒼とした森の奥へと進むにつれて不安がもたげてくる・・・・。
ささやかな冒険と、おじいちゃんが教えてくれた、たくさんの大切なこと。夏の終わりには、敦から暗い表情が消え、たくましい笑顔が見られるようになっていた。母親もまた、雄大な自然の懐に抱かれ、子供との繋がりをゆっくりと見つめ直す。愛する人を亡くしバラバラになりかけていた一家は、“家族の絆”という心の宝物を、この旅で手に入れた。
芥川龍之介の不朽の名作が、台湾の瑞々しい緑の中でよみがえる。
今なお色褪せない芥川龍之介の短編小説「トロッコ」。川口監督は幼いころに教科書で読んだ、この物語を映画化したいと長年温めていた。「まだトロッコの線路が残っている」と知り、ロケハンに訪れた台湾。そこで出会った日本統治時代を経験し、美しい日本語で思い出を語るお年寄りたちに強く心を打たれ、原作を大きく脚色する。運命的に台湾へと導かれ、3年の歳月をかけたオリジナル脚本をもとに、誰もが知っている名作「トロッコ」が、心に響く家族の物語『トロッコ』へと見事に生まれ変わった。
新しい才能と、ホウ・シャオシェン監督ゆかりのスタッフ& キャストの美しい融合。
篠田正浩、行定勲など名だたる監督の作品で、助監督を務めてきた川口浩史のデビュー作に、日台の才能豊かなキャスト・スタッフが集結。他に類を見ない“Made in Taiwanの日本映画”が誕生した。母親役にカンヌ国際映画祭グランプリ受賞作『殯の森』に主演し、海外でも評価が高い実力派女優・尾野真千子。白い顎髭が印象的な祖父を演じるホン・リウは、ホウ・シャオシェン作品で知られる台湾のベテラン俳優。また、森林の再生を願う青年を、『花蓮の夏』で鮮烈なデビューを果たしたブライアン・チャンが演じている。日本の原風景のような愛おしい情景を撮り上げたのは、ホウ・シャオシェン作品で名高いリー・ピンビン。近年は『空気人形』(是枝裕和監督)や、公開が控えている話題作『ノルウェイの森』(トラン・アン・ユン監督)など、国境を越えて活躍している。詩情豊かな音楽は日本を代表するヴァイオリニスト川井郁子が担当。その音色は、観る者に深く優しく浸透し、感動を倍加させる。
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